“きっかけ”がつながりを生み、関係性を育む
20代で音楽制作の会社を立ち上げ、さまざまなCM音楽をはじめ“あたりまえ体操”やテレビ東京の“シナぷしゅ”など、音楽プロデューサーとして活躍する樋口太陽さん。現在は、奥さんのあだちちひろさんと2人の子どもとともに原村に移住し、自然の中で展開する“ボードゲームリゾートGAW”の総支配人も務め、忙しい毎日を送っています。
そんな樋口さんに、人との関わりを生む“きっかけ”の大切さや、原村で関係を深めていくために大事にしている姿勢についてお話を伺いました。
人との関わりは“きっかけ”から始まる
東京でCM音楽の制作会社を立ち上げた樋口太陽さん。仕事上「人との関係性」を大切にしてきました。CM音楽の世界では、実力だけでなく、口コミや信頼関係が仕事の広がりにつながります。そのため、相手に興味を持ち続ける姿勢を忘れなかったといいます。
樋口さんが原村で二拠点生活を始めたのは2017年。“都内に居ながら村民と言いたかった”というユーモアのある理由から始まった暮らしは、やがて定住へと変わりました。原村では“東京とは違う関わり”を感じるといいます。都内では接点のない業界の会社役員など、週末だけ原村に訪れる人も多く、社会的地位の違う人たちが同じ店で買い物をし、庭でバーベキューを楽しみ、同じように過ごして帰っていく。
「さまざまな人と知り合うことで見識は広がりました。同時に、社会的地位は関係なく、ここでは同じものを食べ、同じようなことを楽しみ、同じような悩みを抱えている人もいます。行き着く先は一緒なんだと感じられたことは良かったと思っています」
一方で、関係が希薄になりやすい現代の地方の暮らしも見えてきました。コロナ禍は大きな要因ですが、“同じ村民であり、子どもが同じ小学校や中学校に通っていても、何かきっかけがなければ9年間何も起こらない”ことに気づきました。そんな“気づき”から引き受けたPTA会長は、今年で2年目になります。保護者同士が関わる“きっかけ”をつくろうとイベントを企画したものの、思うような結果は得られませんでした。それでも「続けていくことが大事だ」と樋口さんはいいます。親として、また仕事上でも深く関われるかもしれない人たちと、何も関係性が築けないまま年月が過ぎてしまわないように。
「田舎でも、挨拶だけで終わってしまうなら都会のマンションの隣人と変わりませんよね。立ち入り過ぎることを恐れるより、個人的には関わりを持つ方がいいと思っています」
“コミュニケーションのきっかけ”を作るボードゲーム
原村で樋口さん夫婦が運営する「ボードゲームリゾートGAW」は、コミュニケーションの“きっかけ”をつくる場として機能しています。1日1組限定、自然の中の非日常空間で、年齢や立場を超えてボードゲームに没頭する体験を提供する唯一無二の施設です。
ボードゲームは、ルールを理解すれば誰でも楽しめます。勝ち負けだけでなく、協力型など多彩な種類があり、GAWでは約1000種類を用意。初対面でも自然と会話が生まれ、企業研修や異業種交流、婚活イベント、シルバー向けイベントなど多方面で活用されています。
ここでは、経験差が出ないよう、参加者が初めて触れるゲームをあえて選び、皆が“ゼロスタート”で楽しめるのが特徴です。場に合わせて最適なゲームを選び、参加者全員が楽しめるよう進行するのは、ゲームマスターである奥さんのあだちちひろさんの役目。樋口さんは総支配人として運営やサポート全般を担当しています。
「ボードゲームはコミュニケーションのきっかけづくりだけでなく、ゲームを通して新しい視点を養ったり一つのことを深く考える経験ができたりと、日常生活や学校、社会でも活かせる学びにつながる一面も持ち合わせています」と樋口さんはいいます。
原村で続ける“関係を深める努力”
原村での暮らしは、多様な人が集まる場所だけに、関係性のつくり方をより意識するようになりました。八ヶ岳エリアをPRしようと民間の有志で立ち上げた地域コミュニティ“8ピークスファミリー”に参加し、地元の人と協力しながらイベントにも関わるようになりました。業種も立場も違う人が集まり、人間関係が広がり、仕事につながることもあるといいます。さまざまな話をし、楽しさや時には悩みを共有する場にもなっているとか。
「2万人規模の大学で学生生活を送りました。人が多いと友だちもできそうなものですが、何か小さなまとまりがないと関係をつくるきっかけがありませんでした。原村の魅力は、人口が8000人という程よい規模感だと感じています。
ただ、現代の暮らし方では、油断をしてしまうと人と人が特に関わりを持たずに何十年も経つだけになってしまいます。自分たちの取り組みが、人と人との関わりのきっかけになれたらよいなと思います」













