希望の種をまき自信へ――仲間と共に歩むもうひとつの学校

髙林賢さん 愛情を持ち優しく時には厳しい先生
髙林賢さんは東京都出身。大学卒業後は都内の児童養護施設の職員として勤務していました。同じ職場で今の奥様と知り合い結婚。第一子の出産をきっかけに、自然豊かな信州で子育てしようとIターンを決意しました。現在はフリースクールを主宰し、多くの子どもたちの復学を実現しています。
やっぱり子どもが好き
髙林さんは現在、安曇野市在住。自宅の一部を開放し、学校で集団生活を送ることが難しい、いわゆる不登校や発達障がいといわれる子どもたちを中心に教育支援を行うフリースクールの代表を務めています。
「私は教育現場を目指したわけではありませんでした。もともと児童福祉を志していて、20年ほど前までは都内で児童養護施設の職員をしていました。家庭にさまざまな事情を抱える子どもたちと生活を共にし、親代わりとして接してきました。Iターンを決めたのは、第一子の出産と、施設での仕事をやり切ったという思いがあったからです」と当時を振り返ります。
就農で生計をたてようとIターンしたものの適当な農地が見つからず、小学校で働き始めます。そこで改めて「自分は本当に子どもが好きなんだ」と子どもへの想いを新たにしました。ところが、不登校や集団生活不適応の子どもの多さに驚きを隠せませんでした。
家族の支えが、自宅開放型フリースクールを可能に
「安曇野市で養護学校の勤務も経験しました。そこで特別支援教育に触れ、海外の教育に興味をもつようになったのです。そして、欧州やオセアニア諸国の教育について本で調べる機会があり、受験を土台とした学力競争や教師主体の管理教育をする日本の教育に比べ、競争を排除して自由度が高く、子どもに即した教育をしている点に強く共感しました。普通の学校でもこんな教育ができたら――と思いました」
そこで、自由度を高め学びを楽しめる教育をしようと2015年に設立したのが“LIGHTHOUSE SCHOOL”です。「自宅を一部開放した学校という形に妻も理解を示してくれ、今があるのも妻のお陰です。私の子どもたちも生徒には“親しい家族”のように接してくれています。今では高3、高1、中1と成長しましたが、一番手のかかる乳幼児期は私も忙しく、妻頼りだったことは否めません。ただ、休日は庭や近所で存分に外遊びをしたり、キャンプやスキー、登山など自然も満喫しました。また、ご近所の方々にも温かく接していただき、それが子どもの心の育ちに大きく影響しています。東京育ちの私の目にはとても贅沢な環境です」

事務と指導補佐担当の奥様はなくてはならない存在
教育の基本は“リレーションシップ教育”
「不登校の子どもが抱える一番の原因は“孤独”や“寂しさ”です。この学校で一番重視するのは人との親密な関わりです。学校は月曜日から金曜日の9時から16時半まで。9時から1時間は国語や算数の基礎学習を行い、あとは午前・午後と外遊び、木工、畑仕事、音楽、体育などさまざまな活動をします。これらの活動を通して共同作業の成功体験を積み重ね、自分が社会の一員であること、また私が“できる”を信じて希望を持たせることが大切だと考えています。それが子どもたちの自信につながるからです」
初めは泣いてばかりいた子、車から降りることができなかった子が、今では自分の気持ちを自分の言葉で表現できるようになったと言います。喧嘩もしますが、色々な活動を通して感謝すること、相手を思いやる気持ちも芽生えてくるのだとか。

機械操作も慣れたもの。木工を楽しむ子どもたち
“LIGHTHOUSE SCHOOL”の夢
開校から延べ110名の子どもが同施設を利用。規模は決して大きくありませんが、“信州型フリースクール認証制度による学び支援型”としての認証も受け、学校の先生やスクールソーシャルワーカーとも連携をとりながら過去3年間で希望する家庭と子どものほぼ100%の学校復帰を成功させています。
「学校としてまだ理想とする形にはなっていませんが、ゆくゆくは100人が通える学校にしたいと思っています。健常と呼ばれる子どもたちはもちろんのこと、不登校や発達障がい、可能なら身辺自立の難しい知的や身体に障がいのある子どもも受け入れられる、真のインクルーシブな学校を目指しています。そのため、3つくらいのコース別で教育支援を行うことが必要と考えています。例えばファーストコースとして、人との関わりに苦しさがある子どもには心を元気にして意欲を高め、コミュニケーション能力と基礎的な学力(現義務教育課程の小学4年生程度の学力)を養うコース(現LIGHTHOUSE SCHOOL)。次に、セカンドコースとして、グループワークを中心に集団での学習と中学1年生程度までの学力を養うコースです。ここでは、現代社会の構造と生活を豊かにする一般教養を学ぶためのコースとしたいです。そして3つ目のコースとして、社会自立に直結する専門技術が学べる学校へと発展できればと考えています。あとは、私の後を担ってくれる次世代の「教師」を育てることが私の目標ですね」
信州型フリースクールに認証されたことによる補助金、そして公益財団法人長野県みらいベースによる“信州の特色ある学び”での寄付も受け、音楽やダンスなど多目的な学習スタジオの改築や楽器の充実も果たしました。「子どもは皆尊い」と言う髙林さんのライフデザインは常に子どもと共にあり、少しずつ夢に近づいていきそうです。
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<関連情報>
長野県フリースクール等情報ポータルサイト「Kikka☆Link~きっか・リン~」
信州型フリースクール認証制度や県内のフリースクール、多様な学びの実践事例など、こどもたち一人ひとりにあった多様な学びの選択肢をご紹介しています。
https://www.shinshu-freeschool.jp/









