ライフデザインコラム

移住女子のリアルライフ━地元愛とキャリアの両立ってできる?

神谷朱莉さん 合同会社ふくろう経営デザイン室 副代表/グラフィックデザイナー

中小企業診断士のご主人と二人のお子さんと4人で安曇野暮らしを楽しむ神谷さんは愛知県出身。安曇野の雄大な自然に心を奪われた一人です。就職、結婚、出産とさまざまな経験をし、仕事への不安はありつつも果たした移住。リアルな今の生活をお聞きしました。

 

北アルプスとその裾野に広がる豊かな自然に魅了され、移住を決意

「初めて安曇野を訪れたのは学生の時です。アルプスの荘厳さ、豊かな自然と優しい人たち・・・。一瞬で心が奪われ、感動の景色が日常にあるここで暮らせたら幸せだろうなと思いました」――安曇野の人々が自然とともに生きることを楽しんでいるように感じたと神谷さんは振り返ります。

この旅行をきっかけに移住を考えた神谷さんですが、まだ学生。当時付き合っていた今のご主人は既に社会人で、結婚も考えていたのですぐに移住は無理でした。卒業後は愛知県内のデザイン会社に就職します。そして結婚、出産と自分を取り巻く環境は変わったものの、安曇野への想いが変わることはありませんでした。

「あれから8年、移住とは関係なく夫が建築士から中小企業診断士として転職・独立し、私もデザイナーとして独立しました。その後、二人で会社を設立したのですが、その頃には移住も現実的になっていました。会社は主人がクライアントのニーズを精査し、私が形にしています。紙媒体の制作や商品のトータルデザインなどのほか、店舗開発も手掛けてきました。仕事は心配でしたが、移住するなら子どもが小学校入学前と決めていたので、タイムリミットが後押しになったかもしれません」

どんなに自然豊かな場所を訪れても安曇野に勝る場所はなかった。写真は安曇野の後に足を延ばした木崎湖

 

たまたま始めたXが思いも寄らず功を奏した

「移住後は、仕事が厳しくても1年は生活できるよう準備しました。長野県のことが知りたくて移住の4、5年前から始めたXでしたが、長野県内の知人が増えていき、その人たちと友達になりたくて自分で作ったTシャツを売るイベントも開いていたら、ネットでつながった人たちがリアルな友人になっていきました。Xで移住したこと、仕事に不安があることなど正直に発信していたら、つながりができた友人が仕事を紹介してくれました」

仕事はバーベキューなど遊び仲間からも紹介されるなど、人間関係や仕事は想像以上にいいスタートを切ることができたと言います。

「愛知県では専門サイトに登録していれば問い合わせがあり仕事になっていましたが、安曇野では人のつながりから仕事が派生しています。今ではクライアントとバーベキューを楽しむこともあるんですよ」今は暮らしの中に仕事がある。これこそが神谷さんの望んだ人間関係でした。

「主人は愛知県でのお客様対応も大切にしながら、オンラインを活用して仕事をしています。少しずつ長野県での仕事の割合を増やしていきたいと考えているので、その橋渡しとして今のところは二拠点生活というスタイルを選んでいます」

仕事は自宅と松本市内にあるオフィスで

 

膨らむ地元愛と大きな夢

今年の4月に移住して、前々からやりたかったお店の青写真が7月には固まったと言う神谷さん。「安曇野の水の豊かさには驚かされました。ただ、県外の方が実際にその良さを丸ごと体感できる機会は、まだそれほど多くないように感じています。なので、安曇野の“水”をテーマに、まずは安曇野の水で作った氷を使ったかき氷店を来年開く予定です。軟水で口どけがすごくいいんです。シロップは長野県産の果物や野菜を使ったシンプルなもの。フードプランナーとの開発も順調に進んでいてオープンがとても楽しみです。場所は穏やかな流れの水路があり、水も触れる景色のいい所です。ここで日本の夏を感じてもらえればと思っています」

デザイナーと店舗経営の二刀流生活が来年から始まる神谷さん。お店ではオリジナルTシャツや水を理解できる展示物も考えているそうです。ゆくゆくは大王わさび農場に次ぐ観光地にしたいと夢は膨らむばかりです。