ライフデザインコラム

長期のライフプランを見越した人生設計、本当にできていますか?

一般社団法人MDRT日本会 信越ブロック 2025年度ブロック長
小坂 豊太さん

保険会社で一社専属のFP(ファイナンシャルプランナー)として活躍し、金融サービスの分野で優れた営業成績を残した方だけが入会できるMDRT(Million Dollar Round Table)会員でもある小坂さんは、長野を拠点に活動する、業界でも特に高い専門性を持つ金融アドバイザーです。保険の営業マンとして11年のキャリアを持つ小坂さんは、沢山の方の人生の大きなリスクやお金が関わる瞬間に立ち会ってきました。そして、これまでの経験から現在の社会に於ける金融資産や保険への捉え方について懸念されている点などを聞いてみました。

 

長期目線での人生設計が出来ている人は意外と少ない?
「私が特に警鐘を鳴らすのは、目先の情報に流されやすい現代の金融リテラシーの偏りです。それは、制度の名前だけが先行する時代への懸念でもあります。」
近年、国がNISA(ニーサ)を推奨し始めた影響もあり、金融や投資への関心が高まっている中、多くのお客様の相談を受ける中で、「NISAをやりたい」「iDeCo(イデコ)をやりたい」という「箱」の制度名だけが先行し、「箱の中身に何を入れるのか」について理解していない人が多いと感じるそうで、ネットや周囲からのアドバイスで「NISAをやるべき」という情報は得るものの、そもそも株式と債券の違い、投資信託とは何かが分からず、とりあえず何かを買っておけばいいと考えてしまう傾向に疑問抱くことも多いそう。
「NISAなどの名前だけが先走っちゃう状態であり、今はプラスだから良いものの、本質的な理解がないまま金融商品を買う事を勧めることについてはどうなんだろう、という疑問を抱いてしまいますね。」

 

ライフプランを無視した投資の危険性
小坂さんは、金融商品の活用において、その資金の「使うタイミング」を意識することの重要性を強調しています。
「例えば、老後資金(65歳から85歳にかけて徐々に切り崩す)と異なり、教育資金は18歳に大学に行くという明確なタイミングが決まっています。パフォーマンスが悪いからといって、今年は留年してくれなどとは言えないため、使うタイミングが決まっている資金を全てリスクの高い投資に回してしまうことには、大きな危険が伴います。」
また、一般的な資産形成のサイクルは収入→支出→貯蓄→余剰資金で運用ですが、このサイクルの起点は【収入があること】だと言います。
「多くの人が、病気や怪我、死亡によってその収入が途絶えるというリスクを過小評価していると感じています。だからこそ、最低限の保障(保険)を確保した上で、できる限り早く運用を始めることを推奨しています。」
さらには、「人生設計は今の生活だけで考えるべきではありません。結婚時の情報だけでは分からなかった、両親の介護問題や、5年後、10年後に顕在化する可能性のある問題を想定できるかどうかが重要です。AIやネットでは拾えない、【自分がいない生活を想像できる力】が、将来への備えを確実に前進させていく原動力になると思います。」

 

専門家の真価:「問題を見つける作業」
では、溢れる情報の中で、どのように適切な備えを確立すればよいのでしょうか。小坂さんは、その鍵を握るのは「対面でのヒアリング」だと言います。
「ネットやAIが提供するソリューションは、情報を入力すればすぐに出てくる点で優れていますが、それはあくまでロジックとして間違っていない答えに過ぎません。例えば、ハウスメーカーや銀行が、より高額な融資や住宅購入を勧める場合、彼らの目的は住宅を購入することで一致しており、客観的な別の意見が入りにくい構造があります。保険の金額、家の価格、NISAの金額など、本当にそれが適正な額だったのかを判断するためには、多角的な視点が必要です。」
専門家がいる意味は、多くの事例を扱っていることにあり、個人の経験では到底知り得ない、大きな保険金が支払われた事例や、病気や死に接する機会を圧倒的に多く持っているからこそ、専門家はリスクをリアルに捉えることができます。
自分にとっての理想的な相談役になってくれる専門家かを見定める基準としては、病人が病院に行った際の医師のように、熱があるならどれくらいの体温でいつから熱が出始めたのか、既往歴はどうか、というように、どれだけ真剣にこちらの話を聞いて、汲み取ろうとしてくれるかに尽きます。
「この保険はいいよ。NISAがいいよ。といったソリューション(解決策)を急いで提供するのではなく、「問題がどこにあるのか」を見つける作業を粘り強く行ってくれる伴走者を近くに置くことが、不安を少しでも和らげる近道になるのではないでしょうか。」

 

お金の話は、「未来の自分と家族の話」

目の前の不安を取り除く「対処療法」だけでは、この先が見えづらい現代社会において、本当の意味での安心を手に入れるのは難しそうですね。ライフプラン全体を見据えたうえで、最悪のシナリオにも耐えうる確実な備えを作っていくのが大事なことだと痛感させられたお話でした。